旅の扉

  • 【連載コラム】***独善的極上旅日記***
  • 2017年12月12日更新
フリージャーナリスト:横井弘海

屋久島はレインボーに染まって

雨上がりの屋久島にかかる大きな虹zoom
雨上がりの屋久島にかかる大きな虹
この数年、離島にはまっています。島はどこでもゆったりした空気が心地よく、一方、それぞれの島にある独特の自然と歴史、文化が興味深く、つい離島に足が向きます。この一年間、南は石垣島、西表島、竹冨島、北は利尻島、礼文島、近場では大島に行きました。
そして、屋久島(やくしま)は、一生のうち一度は訪れたいと思っていた憧れの島でした。縄文杉をこの目で見てみたいですよね! そのチャンスが10月末、2泊ながらようやく訪れたのです。
ところが、いざ調べてみると、かの有名な縄文杉に「会う」には、約7キロのトロッコ道と約3キロの登山道を合わせて、往復8~10時間歩かなければなりません。2泊するので行けないこともありませんが、島の旅はのんびりと過ごすのが一番。島を気に入ったら、何度でも行く気です。「縄文杉は次回におあずけしても、島のどこかで大自然の息吹は感じられるでしょう」との確信の下、鹿児島行きの飛行機に乗りました。
緑深い屋久島zoom
緑深い屋久島
「1月に35日雨が降る」虹の島
屋久島は鹿児島県大隅半島の南西約60キロの海上に浮かぶ面積約500平方キロの島です。鹿児島から飛行機なら1日7往復、所要時間約30分。高速船は6往復で所要時間は2時間弱。フェリーも1日1便が運航しており、離島と言っても、天気さえ安定していれば不便ではなさそうです。ただ訪れた10月末は台風22号が北上し、沖縄に接近中。鹿児島から屋久島へ行くプロペラ機は「悪天候による条件付きフライト」でしたが、厚い雲と強風の間をかいくぐり、無事着陸しました。
周囲130キロの屋久島は、ほとんどが森林におおわれた山地で、面積の約20%はユネスコの世界自然遺産、島の約42%は国立公園に指定されています。島の中央には鹿児島県で一番高い山、宮浦岳(1936m)がそびえています。今年、山には11月26日に初雪が降りました。日本で雪が降る最南端の場所だそうです。宮之浦岳に連なる永田岳、栗生岳を合わせて、屋久島三岳と呼ばれます。
海からの湿った風はこれらの山々にぶつかり、「屋久島は月のうち、三十五日は雨」と林芙美子の小説「浮雲」で形容された雨の多い島です。山の影響か、天気や気温も島の南部と北部ではずいぶん異なり、冬場の南部は、北部と比べてセーター一枚暖かいと聞きました。
島の北東部にある空港でレンタカーを借り、南部の尾之間という町にあるホテルを目指す途中、雨がパラッと落ちたかと思うと、雲の間に晴れ間がのぞいたり、天気は猫の目のように変わりました。
宿泊先は裏庭に尾之間三山(割石岳、耳岳、本富岳)を背負ったホテルです。そして、迎えてくれたのは、久しぶりに見る大きな虹でした。しかも、ダブルレインボー!「雨が多いということは、虹もたくさん出るということか」と納得しながら、虹が消えるまでしばらく空を眺めました。旅はそんな自然の大歓迎で始まったのです。
千尋の滝zoom
千尋の滝
神の住む山と豊かな水の恵み
日本百名山の一つ宮之浦岳を始め、屋久島の山々は神の住む神聖な山です。島の人々は古来から信仰の対象としてきました。その周囲は、海岸からも見える前岳と呼ばれる山々です。屋久島のたくさんの雨は、深い渓谷を刻み、水量豊富な滝を生み、島を放射線状に流れる川を作りました。川は大小140もあるそうです。車で走ってみると、山の道路際のあちこちに湧き水があり、とにかく島の水の豊かさを実感します。こんな大自然を前にすれば、人間は自然を畏れ、ひれ伏すのも当然でしょう。
有名な「千尋の滝(せんぴろのたき)」に行ってみました。幅200mあるという巨大な花崗岩の一枚岩の一番遠いところに、勢いよく滝が落ちていました。
落差60mの迫力ある滝です。滝の左側にある岩が巨大で、千人が手を繋いだ大きさがあるそうです。
もう一つ、有名な大川の滝(おっこのたき)にも出かけてみました。これまた圧倒的な水量で大きな岩の上から、ドドドッと水が落ちてきます。雨が降れば、滝は幾筋も増え、さらに迫力を増すことでしょう。
「なんなの、この自然は」と、驚くばかりです。
西部林道のサルたちzoom
西部林道のサルたち
ヤクサルとヤクシカに出会う
屋久島の世界遺産はたいてい山間部にありますが、島でただ一か所、島の西側に、山岳部から海岸線まで連続して世界遺産地域に指定された急斜面があります。西部林道はその急斜面を横切るように作られた長さ約12キロの林道で、山間部には常緑広葉樹の森が広がっています。
台風が近づくなか、道路にカーブが多く、道幅も狭い西部林道は「雨も降ってくるでしょうし、運転になれていない観光客の方には、行くことをお勧めしません」と、レンタカー店の係の方には言われましたが、「雨もやんだし、ゆっくり安全運転で行ってみます」と、車を走らせました。
注意のとおり、林道はカーブが続き、時には2台の車がすれ違うこともできない場所もあり、緊張しながら運転しました。雨が降ると沢が急に増水することがあり、その危険もあるそうです。本来はネイチャーガイドをお願いして、安全に、照葉樹の自然を楽しむべきでしたね。反省。
それにしても、この林道の自然も恐るべしです。平日+台風の接近で観光客も少なかったからか、ヤクシカ、ヤクザルがあちこちから出てきました。元々の住人はあちらで、私のほうが「珍しい動物がいるなぁ」と見られている方だったかもしれません。
ヤクシカもヤクザルもまだ子供がたくさんいて、時にはお母さんサルが赤ちゃんを背負って、道を行く姿に遭遇して大興奮。林道の北部の永田浜は世界有数のアカウミガメの産卵地ですが、この豊かな自然をどう守るか、人間に重要な責任があると、殊勝な気持ちになりました。
尾野間温泉正面zoom
尾野間温泉正面
地元の温泉コミュニティ
尾之間温泉は、ホテルの近所にあった風情のある温泉です。夕方、食事前に出かけてみると、島の人々の集会所のようでもありました。入口の料金所のおじさんは知り合いとおしゃべり。彼の机の上では子猫が気持ちよさそうに昼寝していて、警戒心などない様子で、私がいくらなぜても知らんぷり。ゆっくりした時間の流れが心地よい場所でした。
温泉は尾之間登山道の入口にあるので、登山から帰り際にひと風呂浴びる観光客も多くいました。建物の外には足湯もあります。
温泉の歴史は古く、350年。薄く硫黄のにおいが漂う単純硫黄泉です。
女風呂は照明が暗めの洗い場に細長い石の浴槽があり、大きさは両側に向かいあって座ると約15人が入れる位でしょうか。恐ろしく熱い湯で、温度に慣れるまで、少し気合が必要でしたが、風呂から上がると、肌がツルンとスベスベになりました。
この温泉で感心したことがあります。地元の人の利用する温泉に観光客が行くと、アウェイムード満点で、水を入れてぬるくしようとすると露骨に嫌味を言うおばあさんがいたりしますが、ここはまったく違います。それどころか、子供も大人も「こんばんは」と言って、浴室に入ってきます。風呂上りにタオルで身体を拭いていると、後ろに人の気配を感じました。小学3年生くらいの女の子でした。私の隣の籠を使っていましたが、脱衣場の場所がそれほど広くないので、私が拭きおわるのを待ってくれていたようでした。目が合うと、「すいません。失礼します」と言って、自分の籠からタオルを取りました。
「神様の島だから良い人たちなのかしら」と、その人々の礼儀正しさに、また屋久島が好きになってしまいました。

泉質・・・単純硫黄泉
効能・・・慢性関節リュウマチ、慢性筋肉リュウマチ、神経痛、神経炎、糖尿病、婦人科疾患等
入浴時間・・・7時~21時
休日・・・月曜午前中
入浴料・・・大人(中学生以上)200円、子供 100円
足湯協力金・・・100円
TEL・・・0997-47-2872
ヤクスギランドにてzoom
ヤクスギランドにて
やっぱりヤクスギを見ずに帰れない
尾野間三岳を望むホテルの温泉露天風呂には、朝・夜・就寝前と通いました。毎回、登山を終えた方々が「やはり感動的!」「雨に当たって寒かったけれど、すばらしかった!」と口々に感動を語り合っているのが聞こえます。そのうち、さすがにヤクスギを1本も見ないで帰るのはどうか、という気持ちが頭をもたげてきました。
ご存知かもしれませんが、屋久島で生まれ、1000年の時を超えて初めて杉はヤクスギと呼ばれます。多雨や強風など屋久島の自然が、杉の樹齢を延ばすそうです。屋久島最大の「縄文杉」の推定樹齢は約2000年以上、最古の「大王杉」は3000年以上。17世紀から薩摩藩によるヤクスギの伐採が本格化し、明治までに良木のほとんどは伐採されてしまいました。今、人間に感動を与えるヤクスギは、実は巨大で年輪がゆがんでいたり、切り出しが難しい奥地にあったために伐採を免れた奇跡の木々なのですね。
最終日、空港に行く前に、「ヤクスギランド」という島の東部の安房川支流荒川左岸に残る屋久島自然休養林に作られた自然散策コースに寄りました。所要時間の目安で4つのコースがあり、最短の30分コースで進みましたが、一歩足を踏みいれれば、そこは「千と千尋の神隠し」の世界。川に沿って深い緑が続き、ただ静寂です。そして、霧雨のなかに神々しいばかりに静かに立つ千年杉が現れました。「千年て、どのくらいの時間だろう」と考えても答えは出ません。ただ心も身体も清められたような気分で、ヤクスギランドを後にしました。
すっかり魅了された屋久島。「次は必ず縄文杉登山!」と強い決意をもって旅を終えました。(了)
フリージャーナリスト:横井弘海
元テレビ東京アナウンサー。各国駐日大使を番組や雑誌でインタビューする毎に、自分の目で世界を見たいという思いが強くなり、訪問国は現在70カ国超。著書に「大使夫人」(朝日新聞社刊)。国内旅行は「一食一風呂入魂!」。美味しいモノと温泉を追いかけて、旅をしています。
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